今日も寒かった。
青空が広がった日中は快適だったが、日が沈むとぐっと冷え込む。
あるマンションの1階エレベーターホール。
重い荷物を抱えたまま、ぼくは「▲」ボタンを押した。
6階で止まっていたエレベーターが、ゆっくりと滑り降りてきた。
エレベーターに乗り込み、行き先の9階のボタンを押した。
ドアが閉まろうとした瞬間、ホールに
女子高生の姿が見えた。
見覚えのある制服。
数年前まで毎日見ていた制服だった。
ぼくは「開」ボタンを押した。
「すみません。ありがとうございます」
そう言いながら、乙女が乗りこんできた。
さわやかな笑顔に心が和んだ。
「いえいえ。どうも」
ぼくは照れ笑いをしながら、奥に下がった。
乙女は「14階」のボタンを押した。
ジロジロと後姿を見ないように気をつけた。
いつもの4分の1ぐらいのスピードで時間が流れる。
かなりの濃度で気まずい空気。
エレベーター特有の圧迫感。
同乗者がおばちゃんだったら気楽なのに・・・。
なぜか、苦しい。
7階に着いた。
ぼくはうら若き乙女に荷物が触れないよう気をつけながら、そのすぐ横を通り抜ける。
乙女は「開」ボタンを押し続けてくれていた。
「あ、すいません」
ぼくが笑顔で会釈をすると、乙女も笑顔を返してくれた。
さわやかな気分になれる一瞬だ。
7階での配達を終え、エレベーターの前に戻った。
そこにエレベーターが止まっていて、ぼくを待っていてくれた。
たまたまこの階の住人が降りたとゆう形跡はない。
そのことはぼくが一番よく知っている。
ありがとう。
やさしい気遣いのできる乙女は、ぼくが卒業した高校の後輩だった。
さすが、わが母校の生徒であります。
ちょっと誇らしげな気分になりました。