ぼくが配るべき荷物を置いてある所定の場所に、コース外の荷物が1個だけあった。
「仕分け担当のオジサンのミスだろうな」
そう思って正しい場所に置きなおした。
そして、何事もなく配達を終え、ぼくはセンターに帰還。
ヤレヤレと思いつつ、ぼく専用のコーナーを見ると・・・。
さっきの荷物がっ!!!
どうやって移動してきたんだろう?
足もなければ、翼もないのに。
そんな思考を巡らせていると、H先輩に背中から怒鳴られた。
「ゆうや!その荷物どうして行かんかったんや」
びっくりした以上に腹が立ったのとで、ぼくは即座に言い返した。
「コース外であります!」
絶対的なこの一言で終了と思ったら、そうではなく・・・。
「おまえに行ってほしいけん、そこに置いといたんやで」
と、H先輩が言う。
「そんならメモでも貼り付けておけよ」
などとは言えるはずもなく、届かない心の字幕で訴えるのみだった。
「あ、はい。すいま★スイマセン」
理不尽だ。
悔しい・・・。
なんで謝らなきゃいけないんだ。
せめて古いギャグでもブチかましたい気分だ。
で、さらに追撃のひと言。
「今から行ってこい!」フビライ★はぁーん!?
そんなセッショーな・・・。
お代官様!
オイラは関白太政大臣の身分だけで十分満足でありまする。
ふざけてる場合じゃないっすよ!
オイラの目が黒いうちは、もう心の字幕だけじゃ許さねえ!
「え?今からでありますか?」「ぼくが?でありますか?」「どうしても?でありますか?」「この無責任っ!!」もうね、はっきり言ってやりましたよ。
清水の崖をよじ登るくらいの勇気です。
しかも、ゲルマンなまりのドイツ語で・・・。
H先輩には意味わからんだろう。
2か国語放送じゃなかったからな。
ウシシシ♪
・・・とゆうことで、なんだかんだ思いながらも配達に行った。
グレーと見間違うようなブルーな気持ちで。
ぼくはH先輩のトラックに乗って出撃した。
「これで行け」と言われたからだ。
おかしいな。
ぼくは税込みIQ210の頭脳を高速回転させて、推理を進める。
先にセンターに帰っていたH先輩は、クレームの電話を受けた。
先輩のコースの荷物なんだから、当たり前だ。
で、最初はしぶしぶ自分で行くつもりで準備をしていた。
ぼくが帰ってきたのは、もうすぐ彼が発車しようとするタイミングだった。
しめたと思った彼は、気の弱いぼくを恫喝して、身代わり特攻をさせた。
なるほど!謎はすべて解けた。
卑怯なやつだな!
動機がくっせえ!
やることショボすぎて腐敗してる!
このすっとこどっこい!
タコおやじ!
ああスブタ食いてえ!
イニシャルがHとゆう理由ではなく、ドスケベだからH。
そんなH先輩のトラックの運転室を悪口濃度極限の毒ガスで充満させてやった。
翌日乗り込んだら溺死寸前にまで追い込まれるだろうな。
しかし、悪いことばかりじゃない。
うれしいことに、届けた先のおばちゃんがいい人だった。
「夜おそくにごめんね」
嫌味のひとつも言われるのかと思っていたら、優しい言葉をかけてもらえた。
「いいえ。こちらのミスですから。遅くなってすみませんでした」
ぼくはひどく恐縮してしまった。
「晩ご飯食べた?」と聞かれた。
「まだです」と答えると、おばちゃんが柏餅を2個持たせてくれた。
「お腹すいてるでしょ?帰りにお食べ」
「ありがとうございます」
ペコリとお辞儀をして、ぼくは古い屋敷をあとにした。
トラックに乗り、エンジンをかける。
クルマの流れを完全に無視したロースピードで、夜の街を走る。
こしあんの柏餅をほおばった。
風がきもちいい。
窓ガラスを全開にすると、懐かしい夏のにおいがした。
パシリはつらいっす!ま、いいことも多いから、がんばれるんですけどね。
おわり。
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