はじめて行った君の家。
門をくぐった瞬間、百年前にタイムスリップした。
レンガ塀の西洋風の建物。
クリスマスの飾りを外したような大きなモミの木。
それよりも何よりも、とにかく古い建物だった。
「うわーっ!」
驚いている僕のそばで、君は恥ずかしそうに微笑んでいた。
玄関の白いドアを開けた。
君によく似たお母さんが出てきた。
「はじめまして。ゆうやです」
簡単な自己紹介をしたあと、3人で長い廊下を歩いた。
「ホントはクリスマスパーティに招待したかったんだけどね」とか、「古い家でびっくりしたでしょ」とか。
君のお母さんがいろいろ話しかけてくれたけど、すべてうわの空だった。
君の部屋に通された。
広い部屋だった。
僕の部屋の何倍もあった。
テレビの前に、見たことのないゲームソフトがあった。
【超リアル人生ゲーム】つまらなそうだったけど、一緒にやろうと君が言うから、とりあえずやってみた。
ゲーム機のスイッチをオンにして、君に指示されるままヘッドフォンを付けた。
すると、テレビ画面の中に、見覚えのある少年が登場した。
「え?これって僕?誰が作ったゲームなの?」
僕の問いかけに、君は謎めくような微笑を浮かべるだけだった。
まだ短い人生ながらも、いくつかあった分岐点。
どっちへ進むべきか。
選択肢は用意されていたが、迷っている間などなかった。
僕の意思とは無関係に、自動選択でこれまでの僕の歴史が再現されたからだ。
なるほど。
子どもの僕には、選択可能な選択肢などなかったってことなんだ。
記録映画のように淡々とストーリーは進んだ。
そして、同じ高校の同じクラスで、君と出会った。
現実の僕とまったく同じ。
当然といえば当然のような・・・。
でも、不思議といえば、これ以上不思議なことはない。
世界中で僕と両親以外に知りえないことが多すぎるからだ。
ここでゲーム機が動かなくなった。
「未来へは進めないんだ」と君が言った。
「そうか。でも、誰が作ったんだろうね?」
僕はもう一度聞いてみた。
「わからない。サンタクロースからのプレゼントなの。クリスマスの朝、枕元にゲームソフトとヘッドフォンが置いてあった」
「そうなんだ・・・」
僕はヘッドフォンを外して、いろんな角度から眺めてみた。
特に変わったところはなく、どう見ても、いわゆる普通のヘッドフォンだ。
「それにしても、不思議だよな」
「うん」
「あ!そうだ。次は君の番だよ」
「えー!ヤだ。ゼーッタイだめだからね」
「なに言ってんだよ。ズルイぞ。早くやれよ」
「きゃあああ!!」
涙目になりながら、君がしぶしぶゲームを始めた。
両親に愛されて、しあわせな少女時代が再現された。
君のことがもっと愛しくなった。
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